「毎月サービス残業しているが、これって当たり前なの?」「固定残業代に含まれていると言われたが本当?」「もう退職したけど残業代を取り返せる?」

薬剤師の職場でも未払い残業代の問題は珍しくありません。特に調剤薬局・病院薬剤部では、「薬剤師だから」「みなし残業だから」という曖昧な理由で残業代が支払われないケースが後を絶ちません。


薬剤師にも残業代を受け取る権利がある

労働基準法上の原則

労働基準法では、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた労働に対して割増賃金(残業代)を支払う義務が会社にあります。

残業の種類 割増率
時間外労働(平日の残業) 25%以上
深夜労働(22時〜翌5時) 25%以上(時間外と重複で50%以上)
休日労働(法定休日) 35%以上
月60時間超の時間外労働 50%以上(中小企業も2023年4月から適用)

薬剤師であっても、この原則は変わりません。「専門職だから」「薬剤師だから」という理由で残業代の支払いを免除される法律上の根拠はありません。


「残業代が出ない」と言われるパターンとその真相

パターン①:「固定残業代(みなし残業)に含まれている」

多くの職場で使われる説明ですが、固定残業代制度には厳格なルールがあります

固定残業代が有効であるための条件:

  • 固定残業代として支払う金額・時間数が雇用契約書・給与明細に明示されている
  • 固定残業時間を超えた分は別途、追加で支払う義務がある

つまり、「月20時間分の固定残業代(〇万円)を含む」という契約であれば、20時間を超えた残業分は追加で支払われなければなりません。この超過分が支払われていない場合、未払い残業代に該当します。

パターン②:「管理職だから残業代は出ない」

管理薬剤師であっても、労働基準法上の「管理監督者」(残業代の対象外となる立場)に該当するには厳しい条件があります。

管理監督者と認められる条件:

  • 経営者と一体的な立場で重要な職務・権限を持つ
  • 出退勤の自由度が高い
  • 待遇(給与)が一般社員より相当程度高い

多くの管理薬剤師は、実態として管理監督者の条件を満たしていないため、「管理職だから残業代なし」という説明が違法であるケースが多く見られます。

パターン③:「サービス残業が当たり前の職場文化」

「みんなやっている」「先輩もそうしてきた」という職場の空気だけでは、未払い残業代が正当化される理由にはなりません。会社の指示・黙認のもとで業務をしていた時間は、原則として労働時間としてカウントされます。


未払い残業代はいくら請求できる?

計算式

未払い残業代 = 1時間あたりの賃金 × 割増率 × 未払いの残業時間数

薬剤師の場合の試算例

月給35万円(固定残業代20時間分・月5万円含む)の薬剤師が、実際は月40時間残業していた場合:

超過分:40時間 − 20時間 = 20時間分が未払い
1時間あたりの賃金:約2,000円(月給30万円÷月平均所定労働時間相当)
未払い額:2,000円 × 1.25 × 20時間 = 約50,000円/月

これが1年間続いていた場合、約60万円の未払いになる計算です。

何年分さかのぼって請求できる?

未払い賃金の消滅時効は3年です(2020年4月の民法改正以降、段階的に延長中で将来的には5年になる見込み)。

つまり、退職後でも過去3年分は請求できる可能性があります


未払い残業代を請求するための準備

①証拠を集める

未払い残業代を請求するには、労働時間を証明する証拠が不可欠です。

証拠になるもの 入手方法
タイムカード・勤怠記録 会社に開示請求できる場合も
業務用PCのログイン・ログオフ時間 スクリーンショット・履歴
施錠・入退室記録 会社の入退室システム
業務メール・LINEの送受信時間 自分のスマホ・PCで確認
自分でつけていた勤務時間メモ 手帳・スマホのメモアプリ
給与明細・雇用契約書 手元に保管しているもの

在職中からこまめに記録を残しておくことが、後の請求で大きな武器になります。

②雇用契約書・給与明細を確認する

固定残業代の時間数・金額が明示されているかを確認しましょう。曖昧な記載(「みなし残業代を含む」とだけ書かれている等)の場合、そもそも固定残業代制度自体が無効と判断される可能性もあります。


未払い残業代を取り戻す方法

①会社に直接請求する

証拠を揃えた上で、会社に未払い分の支払いを求める方法です。ただし在職中は関係悪化のリスクがあり、退職を控えている場合は円満に進めにくいこともあります。

②労働基準監督署に相談する

未払い賃金の相談・是正勧告を求めることができます。ただし労基署は強制的な支払い命令を出せるわけではなく、あくまで指導レベルにとどまるケースもあります。

③弁護士に依頼する(最も確実)

弁護士に依頼することで、内容証明郵便の送付・会社との交渉・必要であれば訴訟まで対応できます。

退職と同時に未払い残業代を請求したい場合は、弁護士法人が運営する退職代行を使うことで、退職手続きと未払い賃金請求を同時に進められます。

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すでに退職している場合でも、時効(3年)以内であれば請求可能です。退職後の請求も弁護士に相談できます。


未払い残業代の請求で注意すべきこと

在職中の請求はリスクを伴う

在職中に会社に直接請求すると、職場での立場が悪くなるリスクがあります。転職・退職のタイミングと合わせて動くのが現実的な選択肢です。

会社が倒産・支払い能力がない場合もある

小規模な薬局・企業の場合、請求が認められても実際に回収できないケースもあります。弁護士に相談する際に、会社の支払い能力についても確認しておくと安心です。

感情的にならず、証拠ベースで進める

未払い残業代の問題は感情的になりやすいですが、証拠と法的根拠に基づいて淡々と進めることが解決への近道です。


よくある質問

Q. 退職後でも未払い残業代を請求できますか? A. できます。時効は3年のため、退職後3年以内であれば過去の未払い分を請求できます。証拠(タイムカード・給与明細等)は退職前に確保しておくことをおすすめします。

Q. 「固定残業代」の説明を受けていましたが、超過分は請求できますか? A. できます。固定残業代を超えた実労働時間分は、別途支払われる義務があります。固定残業代の存在は「超過分の請求権を消す」ものではありません。

Q. 未払い残業代を請求したら、会社から嫌がらせを受けませんか? A. 弁護士を通じて請求することで、直接のやり取りを避けられます。在職中に請求する場合は特に、弁護士を介する方が安全です。

Q. タイムカードがない職場でも証明できますか? A. タイムカードがなくても、PCのログ・入退室記録・業務メールの送信時間など、複数の証拠を組み合わせることで労働時間を推定できるケースが多いです。弁護士に相談すれば、集めるべき証拠を具体的にアドバイスしてもらえます。

Q. 未払い残業代の請求にはどのくらいの費用がかかりますか? A. 弁護士事務所によって異なりますが、成功報酬型(回収額の一定割合)を採用しているケースが多く、着手金なしで相談できる事務所もあります。無料相談でまず確認してみましょう。


まとめ

  • 薬剤師にも残業代を受け取る権利がある
  • 「固定残業代」「管理職だから」は未払いを正当化する理由にならないケースが多い
  • 未払い残業代は過去3年分まで請求可能
  • 証拠(タイムカード・PCログ・給与明細)は在職中から確保しておく
  • 確実に取り戻したいなら弁護士への相談が最も有効
  • 退職と同時に請求したい場合は弁護士法人系の退職代行が便利

「サービス残業が当たり前」と諦めていた薬剤師も、正しい手順を踏めば未払い分を取り戻せる可能性があります。まずは弁護士への無料相談から始めてみてください。

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この記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。