「退職金をもらったら税金でどれくらい引かれるの?」「手取りはいくらになる?」「転職前に知っておくべきことは?」
結論から言うと、勤続20年程度までの薬剤師の退職金は、ほとんどのケースで所得税・住民税がかかりません。 退職金には「退職所得控除」という大きな非課税枠があるためです。
※本記事は2026年9月時点の制度をもとにした一般的な解説です。税制は改正されることがあり、個別の事情で結果が変わる場合もあります。最終的な判断は国税庁の公表情報や税務署・税理士にご確認ください。
退職金にかかる税金の基本
退職金は給与とは別に、**「退職所得」として他の所得と分けて計算(分離課税)**されます。税金が軽くなる仕組みが2つあります。
- 退職所得控除:勤続年数に応じた非課税枠が差し引かれる
- 2分の1課税:控除後の金額をさらに2分の1にして税額を計算する
計算式は次のとおりです。
課税退職所得 =(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2
この課税退職所得に所得税・住民税がかかります。退職金が退職所得控除額以下であれば、課税退職所得はゼロで税金もかかりません。
退職所得控除額の計算方法
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) |
勤続年数の1年未満の端数は切り上げて計算します。
勤続年数別の退職所得控除額
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 5年 | 200万円 |
| 10年 | 400万円 |
| 15年 | 600万円 |
| 20年 | 800万円 |
| 25年 | 1,150万円 |
| 30年 | 1,500万円 |
具体例:薬剤師の退職金の手取りはいくら?
ケース①:勤続10年・退職金250万円
- 退職所得控除:40万円 × 10年 = 400万円
- 退職金250万円 < 控除額400万円
- 課税退職所得は0円 → 税金0円、手取りは250万円
ケース②:勤続15年・退職金450万円
- 退職所得控除:40万円 × 15年 = 600万円
- 退職金450万円 < 控除額600万円
- 課税退職所得は0円 → 税金0円、手取りは450万円
ケース③:勤続30年・退職金2,000万円(公立病院などを想定)
- 退職所得控除:800万円 + 70万円 × 10年 = 1,500万円
- 課税退職所得:(2,000万円 − 1,500万円)× 1/2 = 250万円
- 所得税:250万円 × 10% − 9万7,500円 = 15万2,500円(復興特別所得税2.1%を加えると約15.6万円)
- 住民税:250万円 × 10% = 25万円
- 税額合計は約40.6万円、手取りは約1,959万円
このように、勤続年数が長く退職金が1,000万円を超えるようなケースでなければ、税金がかかることはあまりありません。
→ 職場別の退職金の目安は薬剤師の退職金相場はいくら?職場別に徹底解説で解説しています。
退職所得の源泉徴収票も忘れずに受け取る
退職金が支払われると、会社から「退職所得の源泉徴収票」が発行されます。確定申告や各種ローン審査で必要になることがあるため、大切に保管しておきましょう。
→ 詳しくは薬剤師の退職所得の源泉徴収票とは?もらえる時期・使い道・再発行の方法で解説しています。
「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出する
退職金を受け取る際は、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出します。これが重要です。
| 状況 | 源泉徴収の扱い |
|---|---|
| 申告書を提出した | 退職所得控除が適用され、税額が正しく計算される(多くの場合、税金0円) |
| 申告書を提出しなかった | 退職金の20.42%が一律で源泉徴収される |
申告書を出し忘れると、本来かからないはずの税金が天引きされます。その場合は翌年の確定申告で還付を受けることができますが、手間がかかります。退職時に人事・総務から書類が案内されるはずなので、忘れずに提出しましょう。
前年の給与にかかる住民税は別扱い
ここまでは退職金そのものにかかる税金の話です。これとは別に、**在職中の給与にかかっていた住民税の「残り」**をどう納めるかという問題があります。前年の所得に基づいて計算されるため、退職して無収入になっても納税は続きます。
→ 詳しくは薬剤師が退職・転職したあとの住民税はいつ・いくら払う?で解説しています。
社会保険料はかかる?
退職金は、健康保険料・厚生年金保険料などの社会保険料の対象になりません。所得税と住民税の計算のみを考えれば大丈夫です。
企業型DC(確定拠出年金)を受け取る場合
会社が企業型DC(確定拠出年金)を導入している場合、受け取り方で税金の扱いが変わります。
| 受け取り方 | 税金の扱い |
|---|---|
| 一時金で受け取る | 退職所得として扱われる(退職所得控除が使える) |
| 年金で受け取る | 雑所得として扱われる(公的年金等控除の対象) |
すでに会社から退職一時金を受け取っている場合や、過去に別の退職金・DC一時金を受け取っている場合は、**退職所得控除が調整される(重複して使えない)**ことがあります。該当しそうな場合は、会社の担当者や税務署に事前に確認してください。
転職・退職時のDCの手続きは企業型DCは退職・転職時どうする?6ヶ月以内の移換手順で解説しています。DCは退職後に手続きを放置すると不利になることがあるため、早めに確認しましょう。
退職金をもらうタイミングと転職の考え方
退職金は、勤続年数の区切りで大きく変わることが多く、税金面でも勤続年数が退職所得控除に直結します。
- 退職金が「あと数ヶ月で増える」タイミングなら、退職時期を調整する価値がある
- 退職所得控除は勤続年数が長いほど大きくなるため、税負担は長期勤続ほど軽くなりやすい
- ただし、退職金の増加額と転職後の年収アップ額をトータルで比較することが大切
→ 詳しくは薬剤師の転職タイミングはいつがベスト?、退職後の手続きも参照してください。
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よくある質問
Q. 退職金に税金がかかるのはどんなとき? A. 退職金が退職所得控除額を超えたときです。勤続20年で控除額は800万円、30年で1,500万円なので、薬剤師の一般的な民間チェーンの退職金では超えないケースが多いです。
Q. 退職所得の受給に関する申告書を出し忘れたら? A. 退職金の20.42%が源泉徴収されます。翌年に確定申告をすれば、本来の税額との差額が還付されます。
Q. 退職金にも住民税はかかる? A. かかりますが、退職所得控除後の金額(1/2課税)に対する計算のため、控除額の範囲内であれば住民税もかかりません。
Q. 自己都合退職と会社都合退職で税金は変わる? A. 税の計算方法自体は同じです。ただし、退職理由によって退職金の額が変わるため、結果として税額も変わる場合があります。
Q. 転職先が決まっている場合も同じ計算? A. はい、退職金の税金は退職した会社ごとに計算されます。転職の有無で計算方法は変わりません。
まとめ
- 退職金は**「退職所得控除」と「2分の1課税」**で税金が大きく優遇される
- 退職所得控除は勤続20年以下は40万円×勤続年数、20年超は800万円+70万円×(勤続年数−20)
- 勤続20年程度までの退職金はほとんどのケースで税金がかからない
- 「退職所得の受給に関する申告書」の提出を忘れない(出し忘れると20.42%が天引きされる)
- 企業型DCは受け取り方(一時金・年金)で税の扱いが変わる
退職金の金額とタイミングが確認できたら、次は退職の進め方です。円満に辞める方法や、引き止めが強い場合の選択肢を知っておくと安心です。
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この記事は2026年9月時点の制度をもとに作成しています。税制は改正されることがあるため、最新情報は国税庁の公表内容をご確認ください。